来 歴

愚かな弁明

私はもともと
高い背丈を持たなかつたし
ひげなどはじめからありはしなかつたのに
誰に言い訳をしなければならないというのだろう
羊歯は私がやつてきた時から植物の一種だつたのに
昔はほんとは何だったのかと
なぜしつこく言いがかりをつけるのだろう
みんなは私が遅刻したのだという
私がこの世へ
到着するのが遅すぎたので
それで羊歯ははたと口を閉じてしまつたのだという
それならば
私が死ぬ時にどの風も合図をしないで欲しい
羊歯の声を私も一度ききたいから
でもどの道同じことだ
その時は私が出て行つた後なのだから
私の不在に向つてなら
話しかけても徒労
どちらにしても証拠がない話だ
しかし私の方は今度こそ
空よりもずつと低いと
ひげも生やしてなどいないと
大声をあげながらこの世から出ていつてやる


※原文のまま。っがつとなっています。

来歴目次